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  • 2016.05.06 Friday
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コミティアお疲れ様でした+α

 ちょびちょびお久しぶりです。遅ればせながら、コミティアに行って参りました。行けないと思ってたので寝耳に水ティアでしたが、楽しかったです。
 で、史文庫の唐橋さんの大阪文フリでの新刊「出雲残照」を、お言葉に甘えてティアで入手致しました……!やっふーい!
 新幹線の中で読んでたんですが、隣の人にドン引きされる程度にはにやにやさせて頂きました……

 という訳で、「出雲残照」の感想を、書こうと思ってたんですが、作者の唐橋さんから二次創作GOサインを出して頂いたので書いちゃっ……!
 しかもあの感動のラストをそのままにして置けない要らん心が働く残念な出来に……もっと他に書く事があったんでは……?とか思いますが。ひぃ。
 あ、何度でも声を大にして言いますが、今回はイズモタケル陛下にずきゅーんでした。ずきゅーんでした(二度言う)。お蔭で以下の駄文も、陛下救済用みたいなものです。

 という訳で、たぶん私だけが満足な二次創作です。マジすみません。唐橋さん、こんなんで良ければどうぞ……
 あ、ラストの続きみたいな感じなんで、ネタバレ以外の何物でもないです。ご注意。
 タケル、と声に出してみたが、それは余所余所しい響きを帯びるばかりだった。空は厚く、黒っぽい雲が垂れ込め、獣道と言って差支えの無い程の細い山道の片側には、紫色の毬の様な花が咲いている。足元には苔と羊歯とが蒸して、うすら寒いのに湿っているせいで嫌に汗をかく。諦めたくなくて、タケル、ともう一度口にしてみる。今度は悲しげに思えた。
 初春に左手を斬り、イズモへ向けて歩き出した。山を迂回し、川を遡り、「北に海の見える処へ」と案内を乞うて回った。直ぐに今際の夢を見て、何処とも知れぬ死者の国へと旅立てると思った事は否定できない。が、それは甘い見込みだった。左手首の切断面は、既に肉が盛り上がって、案山子(クエビコ)の様な状態になっている。生き物としての強さが、未だに張旦の中で密かに燃えているのだ。イズモタケルにも、オウスにも無かったその心中の炎が、彼は心底煩わしかった。けれど自身が生きている理由にはなる。そう自分を宥めて、緩やかに下る獣道を進んだ。
 この山筋を越えれば、海が見えると言う。南の麓で教えて呉れた青年は、少し困った様子でそう言った。
「塩が運ばれて来る道だったのだけど、ヤマトの奴らが向こう側の土地を荒らしたせいで、もう使っていない」
 それでも良い、と無理を言ってこの道を歩き出した。麓の辺りでは随分と幅の広い、街道の様な道だったけれど、山に入るにつれて細くなり、下りになる頃には今の有様になった。どうやら反対側の土地の者は、道を管理出来なくなる位打撃を蒙ったらしい。捨て鉢な思いで旅をし始めたのは確かだが、面倒な土地に関わり合いになりたくないというのもまた本音である。だが少なくともヤマトの軍が攻め入った場所ならば、そう当てが外れた土地でもあるまい。そう思い、足を踏み出した。
 タケル、とまた声を出す。空しい。堪らなくなって、陛下、と呟いた。会いたいと思った。夢で良い、死の国で良い、とそこで気持ちは蹈鞴(たたら)を踏んで、死後の世界の曖昧さに挫ける。あの王は何処へ行ったのか。土に還ったか?天へ昇ったか?オウスならば、きっと天へ昇って行った。白鷺の様に、白鳥の様に。けれどあの、理想高きイズモの王は、蔓を巻いた様な太刀を帯びた若者は、何処へ行ったのだろう。己の周りにそれとなく見え隠れする彼の気配は、彼が未だ死者の国へと辿り着けていない事を暗示している様で、猶更胸が軋んだ。
 下り坂をのろのろと進んでいる所為で、つま先が痛い。腰に提げた竹筒を振ったが、何も入って居なかった。ふとその行為から、自分はいつから物を食べていなかったのだろうと疑問に思った。ヤマトからの道のりは余りに茫洋としていて、良く分からなかった。ため息をついて、また一歩、一歩と歩き出す。
 そういえば、と一つだけ心に引っ掛かった。今にも雨が降り出しそうなのに、左手首は少しも痛まなかった。


***


 謝りたかったけれど、謝る事で己を枉げるのは無理だと思った。
 太刀をヤマトの皇子から受け取った時、何か予感めいたものが走ったのだけれど、それに逆らわない方が己らしいと思えた。
 死には得心がいった。けれど彼は模糊とした姿で、亡霊という言葉その儘に、後悔が標した足跡を追った。死は痛みでは無い。苦しみでも無い。只、淋しい。
 怒りを知らない足跡は、海からずんずんと遠ざかった。ヤマトへ行くのだと分かっては居たけれど、自分が海の見えない処へ、こんな形で行くという事に驚きと不安を覚えた。謝りたい、謝りたい。だが謝ったなら、彼は今度こそ弩を受け取らなくてはならない気がして、止めだ、と誰にも聞こえない声で呟いた。気持ちは捻じれ、綻びて、夜の沢、蛍に紛れると「いっそ見放してくれれば良かったのに」と思う事もあった。それは彼が人だった頃の、真実の声だった。災厄を招いたのは海からやって来た、かの客人(まろうど)だったのだ、そう苦しい言い訳を己に説いた。けれど幾らその爆ぜる様な思いを振りかざしても、優しい薬師は、海からの客人は、悲しそうに俯くばかりだった。尖った心はそれを卑しい態度と映したけれど、それは違う、と絶叫する己も矢張り居た。
「引き裂かれたのだ、二つに」
 寒暖を感じぬ、五感も殆ど持ちえぬ魂だけの姿になったのは、何も死んだからでは無いのだろう。死はきっかけに過ぎぬ。怒りに身を任せる己と、悲しみに身を浸す己と、耐え切れなくなって二つに分かれてしまったのだ。悲しみが昇華したがって、身体からあくがれ出て来たのだ。そんな考えが、彼を慰めた。
 五体も無い、四肢も無いと信じ切って居たのだけれど、ふとあの櫟に蔓の彫り込まれた太刀、己の死の前触れの太刀を、もう一度腰に佩きたいものだと思った。沢の側に身を寄せていた時の事だ。すると途端に、彼は人の姿を思い出した。指の腹から、さらさらとした櫟の木目の触感が伝わって来る。幻だが、真実だった。そしてまた唐突に、足跡しか見出せなかった薬師の姿が、其処に現れた。驚いて見返すと、彼もこちらを見ている気がした。急に恐ろしくなって目を背ける。混乱の淵に突き落とされた思いだった。恐怖に耐え抜いた頃にはまた、五感が鈍磨し、足跡しか見えなくなっていた。
 何と言えば良いのだろう?心優しき薬師に、何を?方法も無かったし、答えも無い。この心残りは何なのだろう。後悔と、悲しみと、淋しさと――それから他にも、言葉に出来ない何かが、残っている気がした。
 足跡は少しして、また大きく動き出した。海へ行く足取りだった。タケル、という声がやけに大きく響いた。どうしてそれを聞き取れたのだろう。何度も何度も、それは繰り返し聞こえて来た。呼んで欲しかった名だ。けれど同時に、己には過ぎた名だった。その声が彼に、祈りの命を吹き込んだ。海を見たいな、と思うと、太刀が左手にもどって来た。勇気を出して、想像した。タケルだ、私はタケルだ。異国(とつくに)からの客が、木の札に「英雄」と書いてくれたのを思い出した。その凛とした字面に、少々気後れした己を思い出した。理想に捕まって、夢に息が出来なくなった己を思い出した。
「タケル、タケル」
 悲しい声が聞こえる。淋しい声が聞こえる。けれどその声が、彼をもう一度タケルにした。
 人を殺める事のない太刀で良かった、と思い柄を握ると、仄かに温かい。


***


 勾配は徐々に急になっていった。身体を斜面に対して横にして、ゆっくりと下りてゆく。背の高い木々は少なくなり、地面もごつごつとした岩や、砂地が多い。細い川が流れていて、その近辺だけ苔が蒸している。左手が無い事には納得していたものの、岩場を下る今回ばかりは流石に不自由を感じた。
 がさ、という音がして、ふと斜め前方を見ると、羚羊(かもしか)が斜面に涼しい顔で立っている。日が傾きつつあって、毛並みを金色に照らした。暫く目線が勝ち合ったが、ふとその緊張が緩むと、岩場の蔭へと姿を消した。美しいな、と思うと同時に足を滑らせ、平らな処まで投げ出される。太ももの裏の辺りをしたたか打ち付け、立ち上がると痛んだ。振り返ると、矢張り突出した岩場に、数匹の羚羊が居る。のんびりと、本当に何でも無い様子で、人なら到底登れない様な岩場を、すいすい歩いてゆく。
「美しいな、お前達は」
 はは、と随分久しぶりの笑い声を上げた。心底愉快だった。イズモで釣りをした時も、こんな心持ちだったと思い出す。遠い昔の様な、それでいて昨日の様な、不思議で美しい過去である。釣竿を支えながら、王はイズモに伝わる神々の話をしてくれたものだった。海からは、小さく尊い神がやって来たのだという。そして大地に住まいする神と協力して、イズモを豊かにした。
『その二柱は、互いに良い友だった』
 そう言って王は小さく笑っていた。遠来の客と友になれて良かった、と言ったところで岩魚がかかった。
 思い出に埋没していた意識を掘り出すと、太ももの痛みは失せていた。またもう一度タケル、と言ってみる。応えが欲しい訳ではない、と強がってみたけれど直ぐに、嘘だ、と自身に白状した。どうした、だとか、何だ、という応えが欲しかった。だから屹度、王の死んでも良い等という気持ちも、自身についた嘘だったに違いない。
 ふと喉に渇きを覚え、竹筒に水の無い事を思い出してせせらぎに近づき、両手で水を汲んで一口含んだ。冷たいのか温いのか、良く分からない。濡れた手で喉仏に触れると、そのまま小川が流れている様な気がする。どうして己に左手があるのだろう。不思議だったが、何となく分かっている事でもあった。
 西を仰ぎ見ると、雨雲の切れ間から、大きく熟した日が、大地を橙や金に染め上げている。まるで雲に日が支えられている様な風景である。
 視線を下にやると、緑と、畑と、川と、竈の煙を棚引かせる人家と――その先に海が見えた。藍色から灰色へ、灰色から紫へ、紫から橙へと、日に近づくにつれて色を変える波を見た。日を支える雲を更に支え、そして雲の湧き出ずる海だ。日の色に、雄大に染まる海だ。
「陛下」
 大きな声で呼んだ。羚羊は居なくなった。代わりに、彼の横を誰かが通り抜ける。蔓の様な唐草模様が目に飛び込んで来て、張旦はまるで若い時の様に走った。急斜面は、彼の足元には既に存在しなくなっていた。只、煌めく海を見ていた。
 日は、大地に金色の光を投げかけ、今にも海に沈もうとしている。そしてその先に、死者の国が在る。争いも、苦しみも、死別の悲しみも無い国、紡がれ続ける歴史の為に、英雄が死ぬ必要の無い国が在るのだ。
 張旦の追う後姿は、日に追突してしまうのでは無いかという位、躊躇いなく駆け抜けてゆく。櫟の太刀が夕映えに照らされて、まるで本物の太刀の様な赤銅色に見える。何処までも追う内に、いつしか張旦は、己が何処を走っているのか分からなくなっていた。大きな夕日と、金色と、潮騒の音。頭が熱くなり、心の臓が早鐘の様に動悸する。
「――タケル、タケル様」
 後姿に追いつきたくて、息が切れるのも構わずに叫んだ。途端、膝が笑ってその場にがくり、と頽れる。肩で息をしながら額を拭う。この期に及んで汗を流すとは思わなかった、と一人呆れていると、ふと頭上に影が掛かった。
「やっと呼んでくれた」
 顔を上げると、イズモの王が居る。出会った時そのままの、深く澄んだ水を湛えた様な瞳だ。冴え冴えとした指先だ。何の気負いも無く張旦の眼前で膝を折り、小さく笑んで手を差し出す。太刀の柄頭が不思議な色合いに光った。自然に笑い返すと、張旦は手を取って立ち上がる。苦しい呼吸を落ち着け、ばつの悪い気持ちの儘に何と返せば良いか、暫し逡巡した。
「……遅くなりました」
 中途半端な挨拶だ、と我ながら内心で苦笑していると、王も照れくさそうに笑った。二人の周囲が、頭上と言わず足元と言わず、夕日に照らし出されている。此処が何処なのか、二人が何処へ行くのか、皆目分からなかったが、そんな事は死んでから先、大した問題ではないのかもしれない。
「ずっとこの姿で張旦を追っていた。どうしてだか、良く分からなかったのだけれど」
 年若い王は心底不思議そうに首を傾げて、遠い眼差しになる。ヤマトは暗い処だったな、としみじみとした口調で呟いた。
「どうしてだろう、とそればかり考えていたんだ。けれど張旦、あなたがイズモを目指してくれて、海を見られて。それで漸く分かった気がする」
 行こう、と促されて、熟れた夕日の方へとまた歩き出す。二、三歩後ろからついてゆくと、王の背は輝いていた。黄昏の淋しさは、もう無かった。一人のイズモの青年が、イズモの神の国へと帰ってゆくのだ。
「タケル様は、英雄ではありませんなぁ」
 ふと口を衝いて出た言葉だったが、前方の人影はその言葉に足を止めた。ゆっくりと振り返ると、莞爾と笑う。うん、と優しい肯いがある。ざざぁん、と波の音が響いた。
「私はいつも、もう誰も『タケル』にならない方が良いと思っていたよ」
 身を切る様な切なさは、寄せ来る波に洗われて丸くなった。青年の首元を飾る薄紅の貝殻、思い出はきっとそんな色をしている。左隣に並ぶと、櫟の太刀が手の甲に当たった。唐草模様が揺れる。二人とも歩みを止めなかった。
「――そう、ずっと、張旦に言いたい事があって、此処まで来たのだ」
 青年は楽しげにそう言うと、佩びていた太刀を引き抜いて、捧げ持つようにして両手に収める。その優雅な所作を眺めていると、張旦の中で太刀を拵えた時の事がありありと甦って来た。何かを伝えたくて、そして己でもそれを掴み損ねて、彫った文様だ。宛先の無い思いを込めたのだと思う事にしていた。けれど今になって、それが全く違う形で届いていたのだと知る。
 夕焼けが美しかった。雲と海の刃境に揺蕩う日と、その先へ向かう果てしない旅がある。道連れが居るのが嬉しい。東の海へ出づる時、道連れと言える者はいなかった。今の張旦には、友がいた。釣りをし、酒を酌み交わして笑い合う友だ。
 青年は少しだけ目を伏せると、口の端を小さく上げて悪戯っぽく笑った。
「ありがとう、張旦。私はこの太刀のお蔭で、殺さずに済んだよ」
 友はそう言って、蔓の様な唐草を、丁寧に親指の腹で撫ぜる。ざざぁん、と大きく波が轟く。死は恐ろしくないと、張旦は今までずっと思って来た。けれど死も良いものだと思えたのは、これが初めてだった。
「ええ、良く似合っておりますよ」
 不思議と誇らしげに返答すると、どちらとも無く二人で笑った。金色の光が、行き先を示していた。

 了


****************


 *言い訳とか*
 という訳であの、はい、お粗末様でした……。
 知り合いの方の作品の二次創作は初めてだったのですが、とても緊張しました……何かもう感想とか全部盛り込む感じになりました……。タケル様かっこいいですね!!最初は彼が張旦(他人様のキャラは敬称付けるべきと思いますが、張旦ばかりは付けると変!と思って呼び捨てさせて頂きます。ごめんなさい><)の事どういう風に思ってたのかなとか、死ぬ間際どんなだったのかな、みたいな事を書こうと思ってたのですが、張旦も書きたくて……というかタケル様と張旦はちゃんと幸せになれ……!オウス皇子の分まで……!と思ってこんな感じになったのですが、エンディングに蛇足感半端ない感じで本当に申し訳ないです……。あのラストの余韻が良かったのに!!(自分で言う)
 あとどうして夕日と海が日本海側でいっぺんに見られるの?とかそういうのは心の目補正でよろしくです……きっと、そういう、地形もあるんだ!!(逃)
 張旦がヤマトへ来てからも、折に触れて「イズモタケル」の残像を見るのは心が痛みます。あの残像を本人だと捉えるか幻と捉えるかは人によって変わって来るところだろうと思いますが、私は是非ご本人で!という意気込みでこのSSを書きました。太刀の交換と、それによって命を落としてしまうイズモタケルというのは或る意味唯一の公式設定(笑)ですが、それにこれだけの意味を盛り込めるなんて唐橋さん本当に凄いです!読みながらにやにやしつつ唸っておりました。
 何だか私が感想を書くとどこまでも「オウス皇子何処?」になりそうなのでこの辺りで。思いの丈は小説の方に込めましたので……。

 唐橋さん本当にお疲れ様です!&二次創作の許可ありがとうございます!次回作を首を長くして待ってます^^


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